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2018.05.15

【対談レポート】JINS MEME(ジンズ ミーム)開発者インタビュー

はじめに

今回は、2016年10月掲載『JINS MEME開発者インタビュー』の記事をブログにてご紹介します。

こちらの記事をきっかけに、「JINS MEMEで集中力を測ることによる意義」および「マインドフルネスをライフスタイルに組み入れることの有効性」について、ご理解いただければと思います。

※掲載内容は、2016年10月時点での情報となります。

“以下、過去掲載記事より引用

対談メンバー


井上 一鷹

株式会社ジェイアイエヌ JINS MEME Gr事業開発担当。1983年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルに入社し、大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。2012年にジェイアイエヌに入社。社長室、商品企画グループマネジャー、R&D室マネジャーを経て、現在はJINS MEME Gr事業開発担当。


水野 由貴


株式会社インナーコーリング 執行役員。1988年生まれ。大学卒業後、エン・ジャパン株式会社入社。法人企業の採用活動支援を担当し、その後エージェントサービスにて個人のキャリア支援を担当。早期よりマネジメントを任され、社長新人賞、マネジメント賞を受賞。


JINS MEMEはこうして生まれた



水野 このココクリプログラムは、マインドフルネスの習慣を身につけるものなので、集中力を測定し、可視化するメガネ「JINS MEME」の存在がとても大きな意味をもっています。プロジェクトをご一緒させていただくということで、JINSさんの想いなど、お聞かせください。

井上 まず、JINS MEMEが生まれた背景からお話します。我々は2011年ごろ、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太先生にお会いする機会がありました。

水野 任天堂DSの脳トレシリーズを監修された先生ですよね。

井上 そうです。元々、弊社社長の田中が「頭がよくなる眼鏡を作りたい」というような発想で相談に行ったのですが、それよりも「目の動きにはすごいデータが潜んでいる」というお話を、先生が仰ったのがきっかけです。
じつは川島先生は認知症がご専門で、認知症の人と健常者を比較してみると認知症を発症している人は目の動きが遅く、重心バランスが後傾気味だと暗黙的に感じていたそうです。この2つを測定するのに最適なのが眼鏡なのではないか、というのが川島先生のアイデアでした。
皆さんお気づきではないかもしれませんが、眼鏡はパンツの次に身につけているアイテムなんです。起きてすぐにかける、お風呂と寝るときは取る。しかし、それ以外は付けている。おそらく、1日のうち17時間くらいは身につけているのではないでしょうか。これは、データを取るのにとても望ましいアイテムと言えます。また、目は大事なデータが眠っている頭部にあるので、それも重要なデータを取るのに望ましいわけです。
川島教授は「普段の状態のデータを取る」ということを重要視しています。たとえば、白衣の先生の前で血圧を測ると、普段より若干高くなるという現象があります。だからオムロンは、自宅で測れる血圧計を開発しました。JINS MEMEも同じです。ずっとかけているものだから、普段の状態のデータを取ることができるのです。目の動きが遅くなる、重心バランスが後ろに行くという、この傾向をビッグデータとして溜めれば、認知症になる前に対策を取ることができる。先制医療という考え方です。

水野 最初は認知症の研究からだったんですね。「集中力」に着目したのはなぜですか?

井上 川島教授から「脳の活動量の指標を作ってほしい」というオーダーがありました。先生は集中という言葉は使いませんでしたが、一週間で何時間、脳が活動しているかわかれば、認知症の研究になる、ということでした。じつはそれが集中力だったんです。JINS MEMEは目と目の間と、鼻の両脇にある“3点式眼電位センサー” (特許取得済)で、まばたき・視線の変化を捕捉します。また、体軸のぶれや重心移動もセンサーでキャッチし、これで、どれだけ集中しているかが測れるのです。

水野 「なぜ集中力を測った方がいいか」私たちもだいぶ議論しましたね。




集中力を測る必要性、2社が組む理由


井上 そうですね。元々は川島教授からのリクエストにこたえる形で開発を進めていましたが、インナーコーリングさんとお会いして、「こころを鍛える」という価値もJINS MEMEに追加しました。つまりそれは、集中力を可視化する、ということです。

水野 ココクリのプログラムは、ビジネスパーソンのこころを鍛えるプログラムですが、大事なのは学ぶことのあとに、それをライフスタイルにまで落とし込むこと。そのために、自分の集中力がどれくらいあるのか、数値で知ることが重要なんですよね。

井上 人は、定量的な目標がないと自分を変えにくい。ダイエットは体重計に乗らなければ、3キロ痩せるのも難しいでしょう。フルマラソンの42.195キロを、10分タイムを縮めるには、今自分が何時間で走っているか、具体的な数字を知る必要があります。陸上の選手は、1日に何本も走り、その都度ストップウォッチの数字を見て、自分のパフォーマンスの良し悪しを数字を見て把握しています。ところが、ビジネスパーソンの“マインド”には定量的な数字がありませんよね。「集中力が落ちてきたな」「なんとなく仕事のパフォーマンスが落ちているな」と思っても、それは「なんとなく」でしかありません。それはステップアップしにくいのです。目標が可視化されていないので。

水野 マインドフルネスを学ぶことで自分を高めるきっかけにしたい、というのが私たちの思いでもありますね。

井上 その通りです。マインドアスリートという、新しいライフスタイルの提案ですね。我々のビジネスは、JINS SCREEN(前JINS PC)が生まれたように、眼鏡に新しい価値を産みだしてきました。つまり視力矯正のための眼鏡から、視力が悪くない人も使う眼鏡を作り、“目を守る”という新しい市場を作ったのです。JINS SCREENは累計で700万本を超えました。JINS MEMEも“こころを鍛える眼鏡”という新しい市場を獲得するでしょう。

水野 インナーコーリングと組んでいただくJINS側のメリットは何ですか?

井上 インナーコーリングさんと取り組む意義は、弊社の「新しい当たりまえを作る」、つまり新しいライフスタイルを提案する、というのが会社が定義する至上命題でもあることです。今回のプロジェクトで目的が合致した気がしています。我々は集中力を測定するハードウェアを提供し、それをインナーコーリングさんが開発した研修プログラムで学び、解決していく。計測し、解決するというPDCAを回すために、我々もパートナーが必要だったわけです。

水野 弊社でテスト講義をしたあと、アンケートに答えてもらいましたが、JINS MEMEがあることで集中力が実感できたという答えがやはり多かったです。こういった研修プログラムは、集中力というカテゴリーの大切さに気づいてもらうことがとても重要だと思うんです。「確かに、集中できてないな」と気づくことや、集中力が低いことのデメリットを実感してもらう。たとえば仕事のクオリティが低いとか、昇進に影響するとか、転職がうまくいかないなどです。それを実感してもらうために、私たちもJINS MEMEと協業していく意義があると思っています。



意識が高い人のライフスタイル化


井上 最近は、活動量を計るウェアラブルなスマートデバイスが出てきましたが、それらの商品が上手かったのは、機能としては何十年も前からある歩数計であるにもかかわらず、活動量を計ることを“ライフスタイル”に落とし込んだという点です。約3%の人がそれを始め、その生活をショールーム的に続けていて、そのスタイルを定義してくれています。JINS MEMEもライフスタイルになるために、イノベーター・アーリーアダプターに楽しんでもらわなければなりません。

水野 弊社で行ったアンケートによると瞑想習慣が継続した人の実感値としては「集中している時としていない時があると分かった」、「こころが自己中心的な瞬間と他者を思いやる瞬間の違いが感じられた」、「休日の過ごし方が変わった。横になってテレビを見ていても脳が休まらないことがわかった」、「月曜日のパフォーマンスが変わった」といった回答で、とても興味深い結果でした。彼らはアーリーアダプターになりうる人材だと思います。

井上 JINS MEMEで今進めているカテゴリーは、フィットネス、ドライブ、そしてマインド部分です。フィットネスは姿勢と運動の関連性を見るもので、RUNというアプリがあります。ドライブは運転手さんの眠気を感知するもので安全性にも役立つもの。そしてマインド部分の「オフィス」というカテゴリーです。私が思っている課題は、集中力トレーニングの“ライフスタイル化”です。
たとえば、フィットネスでいうと本当に健康の問題を抱えている人は取り組まず、健康でかつ健康意識の高い人が取り入れ始め、ライフスタイル化していきます。走ることが体にいい、と皇居の周りを走る人が増え、ランナーズステーションというものが登場し、その市場は大きく広がりました。こうして裾野に降りていくのに20年くらいかかるイメージです。しかし、我々が取り組む“マインド”の分野は、5年もかけずに広げていきたい。だからログを取るという楽しい行為を付加価値にし、楽しく習慣化につなげ、一気にマーケットに入って行きたいですね。


水野 RUNなどはSNSなどでデータ共有をして、仲間の頑張っているデータが自分のモチベーションになりますが、マインドの分野はまだそれが進んでいません。瞑想のデータが共有され、「あ、あいつ頑張ってるな」とはなっていない。それは、集中力の大切さがまだ認識されていないからなんですよね。いかにマインドトレーニングをしていくことが必要か、ビジネスパーソンに気づかせてあげるということが課題だと思っています。論理的思考力を上げることにビジネスパーソンはお金を費やしますが、こころの筋肉を増やすことの価値に気づいている人がほとんどいません。この先、それが当たり前になってくるといいですね。




AI時代に価値のある人間とは


井上 今、あらゆる事業が「思いつかないものではなくなってきている」と感じます。Uber然り、Airbnb然り。おそらく、小学生に自由にブレストしてもらったら、アイデアとして出てくるのではないでしょうか。しかし、彼らは成功しています。それは、やり切ったからです。ビジネススクールでフレームワークや考え方を学んだり、知識を蓄積させるのは、もう差別化にはならないでしょう。
2~3年後には本になり、読んだらわかる。ハウツー系や知識は陳腐化してしまうと思うんです。AIがあと2、3歩進んだら、ハウツーなどは取って代わられるかもしれません。では何で差別化をするかというと、グリット、そして高い心的耐久力があるかどうか。熱量をもって、物事を進められるか。AIができない仕事に人間の価値が出てきて、そこに人はついてくるはずです。
弊社のブランドビジョンは「Magnify Life(マグニファイライフ)」。人々の人生を拡大し、豊かにするというものです。そこには「Progressive(革新的な)」「Inspiring(インスパイアする)」「Honest(誠実な)」という3つの考え方があります。プログレッシブであるためには、人をインスパイアリングできないといけないし、インスパイアリングできる人は、オネストである。ギブし続けるオネストさがないと、人はついてこないんです。そんな時代だから、こころを鍛える必要があり、我々のMEMEもその使命の一端を担っているんです。

水野 エン・ジャパンの経営理念の中には心技一体という考え方があります。今、世の中は「技」ばかりに意識が向いているような印象です。ビジネスパーソンの心を鍛えるものがないんですね。アメリカのGoogleがマインドフルネス瞑想を元にしたプログラムSearch inside your self(SIY)を開発しましたが、それは時代に必要とされたのかもしれません。イノベーションが加速して、タイトな仕事と膨大なマルチタスクをこなすストレス。メンタルの部分がビジネスパフォーマンスに影響することがおぼろげながらわかってきたことをGoogleが科学的に証明した、という感じでしょうね。

井上 ダイエットと同じで、自分が鍛えないとメンタルも鍛えられませんよね。そのために、JINS MEMEがあります。マインドフルネスをただの流行で終わらせてはいけません。その言葉にこだわる必要はないと思いますが、本質的なものは継続し続けるべき。それこそグリット力ですが、マインドフルネスがライフルタイルに落とし込まれるまで、パートナーの皆さんと一緒に作っていきます。




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ゆりこ政岡
yuriko
㈱インナーコーリングにて、仏教の八正道に基づいた法人向けのマインドフルネス瞑想研修・セミナープログラムを推進する傍ら、ブログの管理・記事制作なども行っています。 今後は、自身もマインドフルネスに精通すると共に、イベント取材などのレポート記事などの連載も継続予定です。
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